クロスパスの特徴とMAP-e(v6プラスなど)との違いをメリット・デメリットで全解説

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Xpass(クロスパス) 91 IPv4 over IPv6
本記事はPRによる消費税込みの価格表示です

フレッツ光回線においてはもはや高速通信サービス「IPv4 over IPv6」は必須のサービスとなりました。

現在、日本国内で利用可能な高速通信サービスは6つあります。

その中でもっとも新しい高速通信サービスがARTERIA Networksが運営しているクロスパス(Xpass)です。

この記事では高速通信サービス「クロスパス」の特徴と、クロスパスを提供するおすすめプロバイダーの紹介を行っていきます。

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クロスパスとは

まずはクロスパスという通信方式の概要についてみていきましょう。

DS-Lite方式の「IPv4 over IPv6」通信サービス

クロスパスは高速通信サービス(IPv4 over IPv6)のひとつで、通信規格として「DS-Lite通信方式」に準拠しています。

IPv4 over IPv6には2つの通信規格「MAP-e」と「DS-Lite」があり、それぞれの通信規格において提供されている通信サービスは以下のようになります。

通信規格 高速通信サービス サービス提供事業者(VNE)
MAP-e v6プラス JPNE
(日本ネットワークイネイブラー)
IPv6オプション BIGLOBE
OCNバーチャルコネクト NTTコミュニケーションズ
DS-Lite Transix IMF
(インターネットマルチフィード)
クロスパス ARTERIA Networks
v6コネクト 朝日ネット

対応ルーターは「DS-Lite方式」が使える(かも)

クロスパスは比較的新しい高速通信サービスなので、先行しているv6プラスやTransixと比べると、対応プロバイダーや対応ルーターがまだまだ少ない状況です。

対応ルーターについても最近発売のルーターはほぼクロスパス対応ですが、ちょっと前に発売されているルーターではクロスパス対応でないものが多くあります。

この点において、先述のようにクロスパスはDS-Lite規格に対応しており通信の仕組みはTransixと同じ、そして多くの場合にTransix対応ルーター(DS-Lite対応ルーター)が利用できます。

MAP-e方式とDS-Lite方式の違い

クロスパスは通信規格「DS-Lite方式」に準拠した通信サービスであり、もう一つの通信規格として「MAP-e方式」があります。

DS-Lite方式とMAP-e方式の違いについて、簡単に見てみましょう。

MAP-e方式 DS-Lite方式
基本通信方式 カプセル化によるIPv4 over IPv6トンネル
NAT方式 NATステートレス NATステートフル
配布IPv4アドレス 共有グローバルIPv4 プライベートIPv4

カプセル化によるIPv4 over IPv6通信

MAP-e方式もDS-Lite方式も「カプセル化によるIPv4 over IPv6」通信方式となります、よくわからないですね。

「IPv4 over IPv6」とは「IPv4通信(パケット)がIPv6通信(パケット)のフリをする」ということです。

IPv4通信でもIPv6通信のフリをするのでIPv4通信の混雑地点を迂回でき、結果としてフレッツ光回線の速度低下を回避でいます。

「カプセル化」とは「フリをする」ための仕組みであり、IPv4通信パケットの先頭にIPv6通信パケットを付与する(IPv4をIPv6で包み込む)ことでIPv6のフリをするということです。

この「IPv4通信でもIPv6通信のフリをする」仕組みについて、MAP-e方式もDS-Lite方式も同じ仕組みを採用しています。

NAT方式

インターネット上ではインターネット共通の住所であるグローバルIPv4アドレスが必要です。

自宅内ネットワークに付与するIPv4アドレスは自宅内のみで利用可能なIPv4アドレスなので、インターネット上では使えません。

このため、どこかで(誰かが)自宅内ネットワークの住所(プライベートIP)とインターネット上の住所(グローバルIP)を変換してあげる必要があります。

MAP-e方式は自宅ルーターでアドレス変換(NAT)する

MAP-e方式は自宅ルーターでアドレス変換(NAT)を行います。

このため、MAP-e方式では自宅ルーターにグローバルIPアドレス(共有アドレス)が付与されています。

この仕組みを「NATステートレス」と言います。

DS-Lite方式は通信事業者(VNE)でアドレス変換(NAT)する

DS-Lite方式では通信事業者(VNE)がインターネットとの接続地点(終端装置)にてグローバルIPアドレスへ変換(NAT)します。

このため、自宅ルーターにグローバルIPアドレスを付与する必要はないので、DS-Lite方式では自宅ルーターにはプライベートIPアドレスが付与されます。

この仕組みを「NATステートフル」と言います。

配布IPアドレス

上記のようにMAP-e方式とDS-Lite方式ではグローバルIPアドレスへのアドレス変換の仕組みが異なることから、自宅ルーターへ配布(付与)されるIPv4アドレスが異なります。

MAP-e方式はグローバルIPv4配布、ただし「共有アドレス」

MAP-e方式では先述のように「自宅ルーターでアドレス変換(NATステートレス)」するため、自宅ルーターにグローバルIPv4アドレスが付与されます。

ただし、「完全なグローバルIPv4アドレス」ではなく、複数人で共有するグローバルIPv4アドレスが付与されます。

IPv4アドレスには1~65535個のポート番号が利用可能ですが、このポート番号を分割して複数人に同じIPv4アドレスを付与する仕組みです。

よって、MAP-eで配布されるIPv4アドレスは「グローバルIPv4アドレス」ではあるけど「共有アドレスなのですべてのポートが利用できるわけではない」ということになります。

DS-Lite方式はプライベートIPv4配布

DS-Lite方式では「通信事業者(VNE)でアドレス変換(NATステートフル)」するため、自宅ルーターにグローバルIPv4アドレスを付与する必要がなく、プライベートIPv4アドレスを付与します。

このため、DS-Lite方式ではインターネット上から自宅ルーターの住所(グローバルIPv4アドレス)がわからくなり、外出先から自宅ルーターへ接続するということができません。

MAP-e方式とDS-Lite方式の共通のメリット

MAP-e方式でもDS-Lite方式でもフレッツ光の夜間の速度低下を回避することができます。

どちらも同じ「カプセル化によるIPv4 over IPv6」方式を採用していることで、IPv4通信であってもインターネットに出るまでは「IPv6通信のフリ」をしているからです。

これによりフレッツ光の速度低下の原因である「IPv4認証地点」を迂回することができ、結果として速度低下を回避できます。

MAP-e方式とDS-Lite方式の共通のデメリット

MAP-e方式でもDS-Lite方式でも、従来の通信方式「IPv4/PPPoE方式」とは大きく異なる点があります。

それは自宅ルーターに「完全なIPv4アドレスが付与されない」という点です。

「完全なIPv4アドレス」とは「グローバルIPv4アドレス」「占有アドレス(すべてのポートが使える)」ということです。

この点においてMAP-e方式は「共有アドレス(一部のポートが使える)」であり、またDS-Lite方式は「プライベートIPv4アドレス」という違いとなります。

この違い(完全なIPv4アドレスが配布されない)により、MAP-e方式もDS-Lite方式も「外部から自宅への接続に制限が生じる」「ポート利用(解放/フォワーディング)に制限が生じる」ということになり、これは従来方式「IPv4/PPPoE方式」を対象として開発されたサービスにとっては制限事項となります。

Transixサービスとクロスパスサービスの違い

MAP-e方式とDS-Lite方式の違いについて説明しましが、次は同じDS-Lite通信方式の仲間であるTransixとクロスパスの違いを見てみましょう。

Transixサービスもクロスパスサービスも同じDS-Lite通信規格に沿って開発されているので、通信の仕組みはどちらも全く同じものです。

TransixはIMF(インターネットマルチフィード社)が提供し、クロスパスはアルテリアネットワークス社が提供している、という違いがあるので、せいぜいルーターが通信のために接続するサーバーアドレス(AFTR)が違う、という点くらいしか差異がありません。

Transixもクロスパスも自宅ルーターに付与されるIPv4アドレスは「プライベートIPv4アドレス」であるため、サービス利用に関する制限も同じです。

通信事業者(VNE)としての運用は違うのか?

通信方式は同じであっても通信事業者(VNE)が違うので、運用は違うかもしれません。

たとえば・・・・・・

Transixを提供するIMFでは「帯域管理」というサービスを契約プロバイダー向けに提供しています。

帯域管理について | インターネットマルチフィード

これはつまり、Transix契約プロバイダー向けに「帯域制限(速度制限)を導入することで接続料金を安くします」という仕組みの提供です。

つまり、Transixでは契約プロバイダーによっては通信量による帯域制限を行っている、と受け取れます。

一方のクロスパスはアルテリアネットワークス社が提供するサービスですが、比較的新しいサービスであることから現在のところ帯域制限に関する仕組みは持っていない(帯域制限していない)ようです。

管理人
管理人
つまりDS-Lite方式を使いたいなら(今なら)クロスパスが良いかな?(この先はわかりませんが・・・)

クロスパスの運営事業者(VNE)

クロスパスを提供する通信事業者(VNE)はアルテリアネットワークス(ARTERIA Networks)です。

あまり聞かない通信事業者ですが、商社である丸紅系列の通信事業者であり、また以前は旧フュージョンコミュニケーションズ(現楽天モバイル)とも資本関係があった通信事業者なので、歴史はかなり古いです。

ブロードバンドアクセス(クロスパス) | ARTERIA Networks

社名 アルテリア・ネットワークス株式会社
英字表記 ARTERIA Networks Corporation
取締役社長 株本 幸二
創業 1997年11月4日
資本金 5,150百万円
決算期 3月末日
上場市場 東京証券取引所プライム市場(4423)
従業員数 連結:997名、単体:791名
(2022年3月31日時点)
本社所在地 〒105-0004 東京都港区新橋六丁目9番8号 住友不動産新橋ビル
主要株主 丸紅株式会社

クロスパスのIPv6/IPv4通信を見てみる

クロスパスの通信環境を、楽天ひかり(クロスパス提供プロバイダー)を例としてみてみましょう。

クロスパスの通信環境

まずクロスパス接続したルーターから「ipv6-tesu.com」を利用した場合に判定される通信環境は以下のようになります。

楽天ひかり「PPPoE接続状況」

クロスパスで付与されるIPアドレス体系

クロスパス接続設定を行ったルーターに配布されているIPv6アドレス/IPv4アドレスは以下のようになります。

クロスパスIPアドレス

上記「WAN6」はIPv6アドレスであり、「2001:~」で始まるグローバルIPv6アドレスが付与されています。

また「WAN」はIPv4アドレスであり、「192.0.0.2/32」というプライベートIPv4アドレスが付与されています。

プライベートIPv4アドレスの変換(VNE NAT)

クロスパスで自宅ルーターに付与されるIPv4アドレスはプライベートIPv4アドレスなので、そのままインターネット上での通信はできません。

実際にインターネット上でのブラウザ環境変数を見てみましょう。

クロスパス・ブラウザ環境変数

上記のように、自宅ルーターに付与されたプライベートIPv4アドレスはインターネット上では「133.〇〇.〇〇.75」というグローバルIPv4アドレスに変換されています。

これはクロスパスを提供する通信事業者(VNE)であるARTERIA Networksによる変換(NAT)されています。

クロスパスを含むDS-Lite通信方式ではこのように自宅ルーターではなく通信事業者(VNE)側でアドレス変換(NAT)を行い、これを「NATステートフル方式」といいます。

クロスパスのメリットとデメリット

デメリット① 外部からの接続ができない

先述したようにクロスパスは事業者(VNE)側でIPv4アドレス変換を行う(NATステートフル)仕組みであり、自宅ルーターにはプライベートIPv4アドレスが付与されます。

このため、自宅外部(外出先などインターネット側)から自宅ルーターへIPv4通信で接続することはできません。

自宅のウェブサーバーやVPNサーバーやファイルサーバー(NASなど)へ外部から接続できませんし、自宅内の見守りカメラなどを確認することもできません。

これはDS-Lite全般のデメリットです

MAP-eなら外部接続できるのか?

v6プラスやOCNバーチャルコネクトなどのMAP-e通信方式であれば「外部から自宅へ接続できるかもしれない」となります。

「かもしれない」というと曖昧ですが、MAP-eはDS-Liteと違い自宅ルーターにグローバルIPv4アドレスが付与されますが、複数人で1つのIPv4アドレスを共有しています。

このため「1~65535番」まで存在するポートを共有する複数人で分けて一部を自宅ルーターに付与しています。

よって、外部接続のために必要なポート番号が自宅ルーターに付与されていれば「外部から接続できる」し、必要なポートが共有する他人に付与されていれば「外部から接続できない」ということになります。

デメリット② ポート開放ができない(意味がない)

上記「外部からの接続ができない」理由として「プライベートIPv4アドレスだから」というのと同じ理由により、クロスパス(を含むDS-Lite通信方式)では「ポート開放できない」という点もデメリットです。

ポート開放の設定自体はお使いのルーターの機能次第で可能な場合もありますが、結局通信事業者側でアドレス変換されてしまうためポート開放設定(フォワーディング設定)をしても意味がありません(機能しません)。

これらの理由により、「外部から接続できない」という点に加えて「自宅内からも特定ポートを利用するアプリは利用できない」ということになります。

たとえばWindowsやスマホで利用される「L2TP/IPSec」などのVPN接続は利用できません(クライアント機能としても利用不可)。

これはDS-Lite全般のデメリットです

MAP-eならポート開放できるのか?

これも先述の外部接続と同じでMAP-e通信方式(v6プラスやOCNバーチャルコネクト)であれば「ポート利用できるかもしれないしできないかもしれない」となります。

理由はこれも先述同様、自宅ルーターにすべてのポートが割り当てられないからです。

利用したいポートが(たまたま)割り当てられていればポート利用可能だし、割り当てられていなければ利用不可ということになります。

ただし「ポート開放」非対応のルーターが多い

仕組み上は上記のように「ポートが使える(解放できる)場合もあるし使えない場合もある」なのですが、一般的にはやはりMAP-E方式でもポート開放できない場合が多いです。

というのも、市販されている多くのルーターは高速通信サービス(IPv4 over IPv6)利用時には「ポート開放できない」という仕様のものが多いからです。

よって、条件付きながらもMAP-e方式においてポート開放を利用したい場合には「IPv4 over IPv6利用時にポート開放設定ができる」ルーターが必要になります。

デメリット③ 情報が少ない・対応ルーターが少ない

最近発売されているルーターはほぼクロスパスに対応しています。

しかし、クロスパスは比較的新しい高速通信サービスであることからずっと前に発売されたルーターでは対応されていません。

このため、古くから利用されているv6プラスやTransixに比べると対応ルーターの選択肢が少なくなるのも仕方ありません。

「クロスパス対応」でなくても使える(かも)

クロスパスはTransixと同じ「DS-Lite通信方式」なのでルーターの通信の仕組みは全く同じです。

違いは通信サービスを提供する通信事業者(VNE)に接続するアドレス(AFTR)が違うだけです。

「クロスパス対応ルーター」とはDS-Liteに対応し、かつクロスパス用のサーバーアドレス(AFTR)を自動取得・自動設定できるルーターを言います。

しかし、DS-Lite対応(またはTransix対応)ルーターの多くはこの「AFTR」が手動設定できるようになっています。

DS-Lite対応(またはTransix対応)ルーターかつAFTR手動設定可能であれば、「クロスパス対応」と表記されていないルーターでもクロスパスでの利用が可能です。

デメリット④ ルーター再起動してもIPアドレスが変わらない

これはメリットととらえてもよいしデメリットとしてとらえても良いですが、クロスパスではルーター再起動によるIPv4アドレスが変動しません。

まったく変動しないわけではなく、一年間使ってみた感じでは「3週間程度の間隔で変わるかな?」という感じです。

つまりメリット・デメリットとしてではなく「特性」として「IPv4アドレスを任意のタイミングで変更することはできない」ということです。

IPv4アドレスが変わらないと何が困る?

IPv4アドレスは変わらなくても多くの場合で困りません。

例えば匿名掲示板などで管理しているIPv4アドレスに紐づいているIDを変えたい、などという自作自演したい場合などにIPv4アドレスが変わると便利だと言えます。

また、ネット上のサービス提供者が「悪質な行為を行った」と判断した場合はIPアドレスで遮断する場合がありますが、クロスパスに限らずIPv4アドレスを複数人で共有している高速通信サービスだと他人の巻き添えを食ってしまう場合があります。

このような場合にはIPv4アドレスが変更されるまで待つしかありません・・・

メリット① フレッツ光の速度低下を回避できる

まずこれは高速通信サービス全体のメリットですが、「フレッツ光の夜間の速度低下を回避できる」「夜間でも快適通信」というメリットがあります。

フレッツ光の夜間の速度低下の原因は通信(問い合わせ)のたびに発生する「PPPoE認証」が混雑していることで「通信が待たされる」「限界を超えると輻輳する」というのが原因です。

クロスパスのようなIPv4 over IPv6通信ではIPv6/IPoE通信がベースとなりPPPoE認証を行わないので、この混雑の原因を迂回できることで速度低下を回避できる、という仕組みです。

MAP-eとDS-Liteではどちらが速い?

これは仕組みの上では「どちらも同じ通信速度」と言えます。

MAP-eにしてもDS-Liteにしても本来はフレッツ光を速くする仕組みではなく「フレッツ光の混雑地点を迂回する仕組み」であり、その結果(混雑回避により)「フレッツ光本来の通信速度」となります。

このため、理論的にはMAP-eもDS-Liteもどちらも同じ通信速度、というのが基本です。

管理人
管理人
ただし最近は高速通信サービスでも帯域制限しているという噂が・・・

メリット② 新しいサービスなので通信設備が比較的余裕(?)

クロスパスは比較的新しい高速通信サービスであり、まだまだ通信設備に余裕があるようです。

このため、クロスパスは(一部でうわさされているような)「公平性による帯域制限」が行われていないようです。

同様の高速通信サービスであるv6プラスやTransixでは「公平性による速度制限」が行われている、という噂もあり、また実際にSo-netでは「v6プラスでも速度制限します」「速度制限解除するなら別途有料オプション」というサービスを激安で提供開始しています(つまりv6プラスで速度制限)。

また、Transixを運営しているIIJ(インターネット・イニシアティブ・ジャパン)では従来より価格公平性による帯域制限の議論を行っており、実際にTransix対応のBB.exciteなどは全国で非常に遅いとツイートされています。

この点において、現在安心して「公平性による帯域制限」を気にせずに利用できる高速通信サービスがクロスパスと言えます。

高速通信サービス(IPv4 over IPv6)の帯域制限

フレッツ光において、IPv4ネットワークではISP事業者は自由に通信事業に参入できましたが、IPv6ネットワークでは限られた通信事業者(VNE)のみが通信サービスを提供できます。

このため、高速通信サービスを利用する場合どのプロバイダーと契約しても高速通信サービス提供事業者(VNE)の設備を使って通信します。

この仕組みを根拠に「どのプロバイダーと契約してもv6プラスならみな同じ通信速度」などと言われており、これは事実でした。

しかし、最近は高速通信サービス利用者も急増しておりIPv6事業者(VNE)の設備も増強が追い付いていないようで、「プロバイダーごとに帯域制限する」という議論や仕組み構築が行われているようです。

Transixはプロバイダーごとに帯域制限できる(している?)

Transixを提供するIMF(インターネットマルチフィード社)ではすでにプロバイダー向けに「帯域制御管理」の仕組みを提供しています(つまりTransixはプロバイダーごとに帯域制限される)。

帯域管理について | IMF

v6プラスは通信サービスごとに帯域制限できる(している?)

また、v6プラスにおいても例えばSo-netが「v6プラスだけど遅いです」「速くするなら有料オプション」というサービスを基本料金激安で提供しています(つまりv6プラスは通信サービスごとに帯域制限している)。

So-net光 minico | So-net

クロスパスへの期待

この点に関して、比較的新しい高速通信サービス「クロスパス」では(現時点では)帯域制限の仕組みを持っておらず、速度制限を気にせずに使える高速通信サービスといえます。

高速通信サービスを選ぶ場合において、「プロバイダーごとの帯域制限」「通信サービスごとの帯域制限」が気になる方は(気になるでしょうが)クロスパスは無難な選択と言えます。

管理人
管理人
今後のことはわかりませんが・・・

メリット③ 固定IPv4サービスが利用できる

クロスパスを提供しているARTERIA Networksではクロスパス利用者を対象として「固定IPv4アドレスサービス」を提供しています。

これは高速通信クロスパスで通信しながらも、クロスパスでは配布されない「固定IPv4アドレス(グローバルIP)」を自宅ルーターに配布してくれるサービスです。

クロスパスによりフレッツ光回線の速度低下を回避しながらも、完全なIPv4アドレスによる外部接続・ポート利用が可能になるサービスです。

注意点としては「クロスパス固定IPv4アドレスサービス」に対応しているプロバイダーは限られる、という点でプロバイダー選びが必要です。

「クロスパス固定IPv4サービス」には専用ルーターが必要

クロスパス固定IPv4サービスを利用する場合、通信方式は本来の(可変IPの)クロスパスとは異なります。

また、従来方式「IPv4/PPPoE方式」の固定IPv4アドレスとも仕組みが違います。

このため「クロスパス固定IPv4アドレス」サービスを利用する場合には、「クロスパス対応」かつ「クロスパス固定IPv4対応」のルーターが必要です。

クロスパス固定IPv4アドレスサービス

クロスパスでは「固定IPv4アドレスサービス」という「IPv4 over IPv6」の高速通信サービスでありながら自宅ルーターに固定IPv4アドレスを付与するサービスを提供しています。

そしてこの「クロスパス固定IPv4アドレスサービス」は一部のプロバイダーでオプション提供されています。

「クロスパス固定IPv4アドレス」オプションを利用することで、「完全なIPv4アドレス」を利用することができるようになり、クロスパスが苦手とする「外部からの接続」や「すべてのポート利用」が可能となります。

「クロスパス固定IPv4アドレス」対応ルーター

「クロスパス固定IPv4アドレス」というサービスは名称に「クロスパス」と付いていますが、通信の仕組みは(可変IPの)クロスパスとは全く違う通信方式です。

また、従来方式「IPv4/PPPoE通信」の固定IPv4アドレスとも仕組みが異なります。

このため、「クロスパス固定IPv4アドレス」を利用する場合にはそれ専用の「クロスパス固定IPv4アドレス対応ルーター」が必要になってきます。

実は「クロスパス固定IPv4アドレス」対応ルーターはあまり多くなく、対応ルーターのほとんどが業務用高性能ルーターであり、一般消費者向けの製品としては事実上エレコム製ルーターのみとなります。

ARTERIA Networksが提供している「クロスパス対応ルーター」に固定IPv4アドレス対応ルーターが記載されています。

クロスパス対応機器 | ARTERIA Networks
※PDFが開きます。

「クロスパス固定IPv4アドレスサービスを利用するには専用ルーターが必要」という点を覚えておいてください。

クロスパスが利用できるプロバイダー

クロスパスは高速通信サービスの中でも比較的新しいサービスなので、先行するv6プラスやTransixほどサービス提供事業者が多くありません。

しかし、中小や地域限定のプロバイダーが積極的にクロスパスを採用している印象です。

ここではクロスパスを提供しているプロバイダーの中で、特徴的でありおすすめできるプロバイダーをご紹介します。

【楽天ひかり】クロスパスとPPPoEが併用できる

楽天ひかりはクロスパスを最初に採用したプロバイダーです。

楽天ひかりと聞くと「楽天モバイルとセットで1年間無料」というキャンペーン特典が大きすぎて「安かろう悪かろう」的に語られる場合が多いようですが、私は楽天ひかりを一年間使ってみましたが悪くありません。

クロスパスとPPPoEが併用できる

楽天ひかりは標準で高速通信クロスパスと従来からの通信方式「IPv4/PPPoE通信方式」を提供しており、自宅ルーターの接続設定によりどちらを使って通信することもできます。

この記事で説明したようにクロスパスを含む高速通信サービスに共通する「利用できないことがある」という曖昧な注意書きは「完全なIPv4アドレスが付与されない」ことに起因します。

楽天ひかりでIPv4/PPPoE通信を行った場合、自宅ルーターには「グローバルIPv4アドレス」「占有IPv4アドレス」が付与され、これにより「外部からの接続」「全ポート利用」が可能となります。

楽天ひかりならフレッツ光の速度低下を回避できる高速通信クロスパスと、IPv4/PPPoEの「完全なIPv4アドレス」によるサービス利用制限の回避が両立(併用)できます。

IPv4/PPPoEがかなり優秀

楽天ひかりが提供している「IPv4/PPPoE」は我が家の環境ではかなり優秀です。

まずIPv4/PPPoEで自宅ルーターに付与されるIPv4アドレスはグローバルIPv4アドレスであり、かつ占有IPv4アドレスです。

このため、先述のようにクロスパスの弱点(不完全なIPv4アドレスに起因)をIPv4/PPPoE併用により完全に補完することができます。

また、「我が家の環境」についてですが、我が家はVDSL配線方式なので最大通信速度は100Mbpsとなりますが、そのうえでフレッツ光が混雑する夜間の時間帯(20時くらい)でも以下のような通信速度が出ます。

楽天ひかりPPPoE速度測定

ほぼ、VDSLの規格通信速度上限まで出ています。

楽天ひかりが提供するIPv4/PPPoE通信は実はかなり優秀であり、これが標準提供である点を考慮しても月額料金は高くありません。

テレワークでも不安のない楽天ひかり

このように高速通信クロスパスを利用しながら、簡単にIPv4/PPPoE通信の併用ができます。

現在、仕事の仕方が変わってきており自宅でテレワークを行う人も多くなってきました。

この場合、「会社へのVPN通信接続」は避けて通れません。

楽天ひかりなら通常利用は高速で快適なクロスパスを利用しながらも、いざという場合には従来の通信方式「IPv4/PPPoE接続」を併用できることで、テレワーク利用などにおいても不安がありません。

もしテレワーク利用前提で光回線を選ぶ場合、安易に高速通信サービスを選ぶべきではありません。

楽天ひかりを一年間使ってみてのリアル評価は以下の記事を参考にしてみてください。

【enひかり】クロスパス固定IPv4アドレスが利用できる

enひかりは株式会社縁人が提供しているフレッツ光コラボです。

最近はやりの「シンプルで低価格なフレッツ光回線」の先駆けとなったサービスであり「月額料金最安級」「契約縛りなし」という特徴があります。

また、高速通信サービスにも特徴があり「v6プラス/Transix/クロスパスが選べる」「v6プラス/クロスパス固定IPv4サービス提供」という点も大きな特徴です。

クロスパスだけではなく、いろんな高速通信サービスを使ってみたい・遊んでみたいという場合には唯一のプロバイダーと言えます。

enひかりの「シンプルな光回線サービス」

enひかりは最近はやりのシンプル低価格光回線の先駆けとなったフレッツ光コラボです。

その料金体系と契約形態は以下のようになります。

費用項目 enひかり月額料金
戸建て向け 集合住宅向け
初期費用 契約事務手数料 3,300円(新規)
2,200円(転用・事業者変更)
標準工事費 16,500円(派遣工事・宅内工事あり)
8,360円(派遣工事・屋外工事のみ)
2,200円(派遣なし、局内工事のみ)
月額料金 基本料金 4,620円/月 3,520円/月
v6プラス
オプション
198円/月
※Transix/Xpassも選択可能(198円/月)
v6プラスルーター
レンタル
提供なし
※特価販売あり
割引サービス 「勝手に割り」
※ahamo(アハモ)・UQモバイルとセット利用で110円/月を割引
契約 契約期間 契約期間の縛りなし
解約手数料 なし(無料)
支払い方法 クレジットカード払い
口座振替払い

ポイントは以下の通りです。

最安級の月額料金

en光の月額料金は「戸建て向け4,620円/月(税抜き4,200円/月)」「修道住宅向け3,520円/月(税抜き3,200円/月)」です。安いですね。

これに高速通信サービスがオプション料金198円/月となります。

高速通信サービスが選べる

高速通信サービスは「v6プラス」「Transix」「クロスパス」の中から選ぶことができます。

契約時に選んでも後から他の高速通信サービスへ変更することもできます。

なお、enひかりの標準提供される通信方式は「IPv4/PPPoE」ですが、高速通信サービスをオプション契約した時点で「IPv4/PPPoE」は利用できなくなります。

そして、高速通信サービスに加えて「IPv4/PPPoE」を併用したい場合、別途「IPv4/PPPoEオプション(550円/月)」のオプション契約が必要です。

よって、高速通信サービスとIPv4/PPPoEを併用する場合には思いの他、高くなってしまいます。

高速通信の固定IPv4アドレスサービス対応

enひかりが提供する高速通信サービス「v6プラス/Transix/クロスパス」の中で「v6プラス/クロスパス」については「固定IPv4アドレスサービス(770円/月)」を提供しています。

高速通信サービス向けの固定IPv4アドレスを提供しているプロバイダーはあまり多くなく、その点でenひかりは特徴的なプロバイダーと言えます。

スマホセット割引「勝手に割り」

料金においても面白いのが「勝手に割り」というスマホ向けセット割引です。

ahamo・UQモバイル・povoをご利用の方であれば、enひかりの月額料金から110円/月の割引適用が受けられます。

契約縛りなし

そして契約面の特徴が「契約期間の縛りなし」という契約形態、当然解約時の違約金はありません。

また、これは基本料金(基本契約)だけでなく各種オプション契約においても利用期間契約の設定はありません。

すべてのサービスにおいて「いつでも使えて、いつでも解約できる」というサービスになっています。

テレワークも万全!必要な時だけ固定IPv4アドレスサービス

一つ目のおすすめ「楽天ひかり」では「簡単にクロスパスとIPv4/PPPoEが併用できる」という点で、クロスパスの弱点を補完できるという紹介をしました。

しかし、enひかりなら「クロスパス固定IPv4アドレスサービス」を利用することで、面倒な併用設定をしなくても「完全なIPv4アドレス」を利用することができます。

これにより、クロスパスによる高速通信と「完全なIPv4アドレス」による外部接続・全ポート利用が可能となります。
※v6プラス固定IPv4アドレスでも同様です。

しかも固定IPv4アドレスオプションについても「いつでも契約できて、いつでも解約できる」ので必要な時だけサービス利用することができます。

これらの点から、enひかりはクロスパスを提供するプロバイダーの中でもダントツでおすすめできるプロバイダーになります。

まとめ

クロスパスはDS-Lite規格の一つの通信サービス

クロスパスはARTERIA Networksが運営・提供している高速通信サービス(IPv4 over IPv6)です。

通信規格としてDS-Lite通信規格に沿っているので、同じDS-Lite通信規格のTransixやv6コネクトと同じものです。

通信規格 高速通信サービス サービス提供事業者(VNE)
MAP-e v6プラス JPNE
(日本ネットワークイネイブラー)
IPv6オプション BIGLOBE
OCNバーチャルコネクト NTTコミュニケーションズ
DS-Lite Transix IMF
(インターネットマルチフィード)
クロスパス ARTERIA Networks
v6コネクト 朝日ネット

クロスパスのメリット・デメリット

クロスパスをはじめとする高速通信「IPv4 over IPv6」はフレッツ光の通信混雑地点を迂回することで、通信混雑時でも速度低下を回避できるというのが最大のメリットです。

その反面、仕組み上「完全なIPv4アドレスが付与されない」という点から以下のような弱点(デメリット)があります。

「IPv4 over IPv6」の弱点

  • 外部からの接続ができない・できない場合がある(不安定)
  • アプリが利用するポートが利用できない・できない場合がある(不安定)

このため「自宅サーバー・機器への外部からの接続」「自宅からL2TP/IPSecなどのVPN接続」ができないという問題(注意点)があります。

クロスパスのおすすめプロバイダー

クロスパスを提供するプロバイダーを検討・選択する場合、先述のようなクロスパスを含む高速通信「IPv4 over IPv6」の弱点を回避できるプロバイダーを検討するとよいでしょう。

クロスパスとIPv4/PPPoEが併用可能な「楽天ひかり」

楽天ひかりはクロスパスと同時に従来の通信方式「IPv4/PPPoE通信方式」を標準提供しており、併用(同時通信)が可能です。

通常はクロスパスで快適な通信を行いながら、「完全なIPv4アドレス」が必要な時にはIPv4/PPPoEを利用する(併用する)ことで、クロスパスの弱点を補完することができます。

しかも、楽天ひかりのIPv4/PPPoEは速度面においてもかなり優秀です。

クロスパス固定IPv4アドレス対応の「enひかり」

enひかりはクロスパス向けに「固定IPv4アドレス」を提供しており、いつでも必要なときにオプション追加することができます。

これにより、楽天ひかりのように「IPv4/PPPoE併用」をすることなく、クロスパス通信だけで「完全なIPv4アドレス」を利用することができます。

この点において、クロスパス提供プロバイダーとしてenひかりはおすすめです。

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